/昨年(令和2年)初頭ごろから日本で拡大しだした新型コロナウイルス、早々に突然勃発し世間を騒がせた事件は横浜港での外国観光船の新型コロナ集団感染だ。政府をはじめ神奈川県も患者受け入れ病院の手配、船内の感染拡大防止等に手をとられているうちに、全国に新型コロナがまん延、外国観光船事件の延長線上で新型コロナ対応がとられているように見られる。その場しのぎ、後手後手の応急処置、国民への注意の掛け声、行動制限の緊急事態宣言等だけで今日(令和3年夏)に至っている。この間、周期的に感染の大波が繰り返され,今なお終息する様子にない。政府の新型コロナに対する油断、認識、取り組みの甘さ等で、今や国民は疲弊しきっている。
昨年らいの政府の動きをふりかえってみると、おかしなことに気づく。政府の肝心の政策展開が伺えないのである。例の三密をはじめとして、会食の人数制限、居酒屋の営業時間制限、大規模イベントの制限等々コントロール的な、つまり業務的レベルのことばかり、これらは都道府県の関係部署でやればいいことであって、国はコロナ終息をしっかり見据えて前向き、積極的な行動、もっと次元の高いレベルから、大局的、戦略的政策立案、政策展開に専念すべきだ。
新型コロナが発生して半年ほど過ぎた昨年夏頃には、業務レベルの対応から戦略レベルへの切り替えがされるべきであったが、政府は油断していたのか、力不足なのか安きに走ってしまったようだ。新型コロナは長期戦になることが十分に考えられた時期にあったにも関わらず、抜本的な対策を打たずにスルーしてしまった。そして今なおその取り組み方は変わらない。 例えば、
1.病床確保の認識、先読みが甘かった。日を追うごとに病床の確保は難しくなることが自明であったにもかかわらず、感染症受け入れ病院の確保増大、専門病院の設置に動く気配はなかった。新型コロナは稀にみる大型感染症だけにどれほどの規模の病院、センターを、全国のどこに配置していくか、そのための医療従事者の確保、充足できないときの医師等の配置転換等を伴なった緊急人材養成、感染者の安全・スピーディな搬送体制、既存病院との役割分担、連絡網の構築等々での政策はなおざりにされてしまっていた。
2.ワクチン開発は主要国はすでに着手していたが、日本はかなりの遅れをとった。政府は早くから積極的に旗ふりをして主要病院、製薬会社、医療機器メーカー、大学等の連携体制づくりはもとより、それらへの人材、施設、予算等の投入、調整等をすべきであった。
3.また、そのワクチン接種においても、せっかくワクチンが海外から確保できたのにも関わらず、打ち手がいないということから国民への接種が遅れに遅れ、先進国の中では接種率は下位レベルにある。これが今日コロナ患者が急速にふえる大きな要因になっている。アメリカはコロナ対策は遅れたが、一般人にも接種作業(打ち手)を認めるなど柔軟な姿勢で臨み、接種率は世界の上位レベルまでもってゆくとともに、早々に感染を抑え込み経済活動再開にこぎつけている。主要諸国も非常事態ということから強力な取り組みでそれぞれ成果をあげている。
4.GOTOキャンペーン、これがその後のコロナへの取り組みを難しくし、現在の医療崩壊をも招く要因にもなった。
昨年の後半、新型コロナの感染は下火になりかけたように見えたかの時期があった、政府は間を入れずコロナ終息に向かいつつあることの成果を知らしめるべく、また、国民(関係業界含む)のご機嫌をとるべく GOTOキャンペーン を打ち出してきた。旅行や飲食をすれば、期間、金額等限定であるが費用の半分近くを国が負担しようとするものだ。まだ、コロナが完全に終息していないだけに旅行、食事に行ってコロナに感染したくないという国民もいたと思うが、コロナを忘れてしなったのかと思わせるほど、そこそこの国民が反応した。1回では物足りなく2回、3回と利用するものも少なくなかったようだ。ところが、コロナの感染がぶり返してきたため政府はあわてて中止に追い込まれる。
GOTOキャンペーン の実施には大きな予算を必要とするため、 政府は 詳細を詰めるのに時間を要した。また、中止に至っては国民も代金を負担してしまっているだけにキャンセル料の扱いなど一層慎重な扱いを要した。いずれにしても政府はコロナが終息もしていないのに、多額の金と大事な人材と貴重な時間をこのキャンペーンに費やしてしまった。またこのあたりから国民の気のゆるみも増幅されはじめた。政府がこの大事な時期に本腰をいれてコロナ終息に取り組んでいたなら、国民はコロナは一筋縄でおさまるものではないとう自覚、緊張感をもってコロナに対峙しておれば、今日のような医療崩壊という最悪の事態を迎えることは避けられたであろう。
この場に及んでも今なお GOTOキャンペーン 再開を望む声がくすぶり続けているのはいかがなものかと思う。
リサーチ会社に依頼して、コロナに感染した方、していなかった方のGOTOキャンペーン の利用の有無をリサーチすれば、とんでもない結果が出てきそうだ・・・。
5.最近で言えば「抗体カクテル療法」である。せっかく新型コロナに対していい治療方法を発見しておきながら、その普及で大きな失態をやらかした。 「抗体カクテル療法」 は新型コロナに感染しても感染7日以内の軽症者には重症化を防ぐ効果があるという。ところが厚労省は「入院してる患者にだけ使用を認める」との通達をだした。入院したくても入院ができなく自宅療法になってしまっている感染者が全国に12万人ほどもいるさなかにおいてである。運よく入院できている患者の多くはと言えば効果がでる感染7日迄をとっくに経過してしまっている。緊急事態宣言下において、本当に非現実的なはなしだ。いったい大きな効果が期待される「抗体カクテル療法」はどこで使おうというのか。この通達はまわりからのブーイングで早々に変更されて、“入院以外、つまり外来(通院)でも医師の立ち合いがあれば認める”ことに変更になった。お粗末すぎる。
もともとの厚労省の言い分は、 「抗体カクテル療法」 は医師による接種後一日の経過観察が必要だからということであった。入院だったらそれがかなうと言うのだ。患者一人に医師一人という単純な発想からすれば医師の数は無限大になってしまう。ところがこの発症率は100人に1人ぐらいとのこと。だったら “緊急事態宣言”下 の中である、大病院だけ負担を強いるだけでなく、地域の町医者にも新型コロナ対策に参加してもらい、地域の学校等の施設(体育館、公民館等)を徴用して、その地域の町医者に輪番制で 「抗体カクテル療法」 後の経過観察をお願いすれば解決できることだ。
この非常事態下においても省庁は机上で決めてしまう安易さ、役所の仕事の取り組み方がこの場に及んでも変わらないことに驚かされる。一人でも多く国民の命を守りたいという情熱、やさしさがあれば、上記通達前にもっと事案の深堀ができたはずだが・・・・・。
ところで 、この 「抗体カクテル療法」を集団会場を設置して実施するための予算は、今までのコロナ関係で使った額からすればほんのわずかである。これを都道府県レベルまで政策的に落とし込み実践させていくことこそが政府の本来の役割だ。
6.最近になって噴出しだした野戦病院設置の議論についても、入院したくても入院ができなく死者が出て医療崩壊がはじまってしまった今になって、「ざけんな!」と言いたくなる。中国などは昨年夏ごろ、1週間ほどで大規模なコロナ専用病院を設置して治療開始するなどでして早々にコロナを鎮静化にこぎつけている。大きな敷地にテントをはったり、運動施設等を借り切たきって急場をしのいだ国もある。日本では最近、やっと野戦病院という名のもとに、設置してはとの話が持ち上がっている。とかく日本は後手後手の 後手後手である。非常に残念だ。
以上、政府の無策をあげれば切りがないが、本当にお粗末そのものだ。国はコロナ関連で金は出したと思うが、それ以上のことは民間任せ。各省庁は法令の縛りから言い訳ばかり。今、わが国の多くの地域は“緊急事態宣言”下にあるのだ。そのへんの危機意識が国民もそうであるが、政府、官僚にも乏しい。
特に今や、救急車で患者を運んでも受け入れてくれる病院がなく、自宅に戻されてしまう。十分な治療が受けれなく亡くなる方も増えてきている。あなたが今、急にぶっ倒れても入院できる病院は、この日本にはないのですぞ! おおよそのインフラが整っている現代社会において、大変恐ろしいことである。まさに日本は異常事態だ。
この国家的非常事態宣言下、国民の健康を最優先に考えた法の拡大解釈があっていいと思う(自衛隊の件では憲法の拡大解釈があれだけできたぐらいだ。)。それが心配なら、国会でどんどん審議して法案を可決していけばいいだけのことだ。諸外国は取りうる最高の権限でコロナ鎮静化に取り組んでいる。日本の国会は現在、夏休み中、政府も国会議員からも臨時国会開催の強い声が聞こえてこない。わが国は長く続いた平和ボケの後遺症にさいなまされているのか。