新聞折込のチラシ量は年々増加の一途を辿っている。これらのチラシを業種的に分類してみると一番多く見られるのはスーパーのチラシ、次が不動産屋のチラシ、その次が意外にも塾のチラシなのである。しかも塾だけに頭が働くのかそのマジックは最たるものである。 塾チラシほど数字を巧みに操って、読者を勘違いさせるものはない。特に一部の常連の塾においては度をこしている。スーパーのチラシなら、100グラム当たり○○○円とか1グラム当たり○○円の記載で品質の良否はさておき比較できるが、塾の金額表示はそうでない。週2回 一回80分で月額授業料24,000円とか、60分で19,000円とかだけであるなら、1分あたりに換算すればどちらがお得なのか分かる。
ところが、昨今多くなった個別指導ともなると(週2回 一回80分までの条件は同じとして)、そこに講師1人に生徒2人という条件が加わり月額24,000円、講師1人に生徒3人だと21,000円といった表示になる。金額だけ見れば3人の方が1割ほど注.1安そうに見えるが、個別指導だからマンツーマン(個人との完全対応)での指導になることを考えれば、講師と一人ひとりの生徒が直接に接する時間は生徒2で一人当たり40分注.2、生徒3人で一人当たり27分ほど注.3ということになり、講師1人に生徒2人の方が、講師1人に生徒3人より1.5倍ほど注.4多くの指導を受けることができ、かなりお得になることが分かる。
注.1 (24000-21000)÷24000=0.125
注.2 1回あたり80分の授業として生徒2人で一人当たり 80分÷2人=40分
注.3 1回あたり80分の授業として生徒3人で一人当たり 80分÷3人=27分
注.4 40分÷27分=1.48
ここまでなら、まだ計算が楽だが、そこに、一部の商魂たくましい塾ともなると3人で50分授業とかを表示してくる。個別指導で講師1人に生徒1人は家庭教師並みになり料金が高くなる。講師1人に生徒2人になると講師の待ちがなく、交互に見るので生徒にも余裕(演習とかの時間がもてる)ができる。ところが講師1人に生徒3人ともなると、生徒は自分の番が来るまで時間がかかりすぎ待ち状況発生による時間ロスが発生する。こうしたことから生徒3人で50分授業は、金額を安く見せるだけで本来の個別指導にならない。3人以上は厳密にいうと「グループ指導」である。ましてや、生徒4人、生徒5人で個別指導とうたうのは言語道断だ。個別指導というのは、「講師1人に生徒2人」の指導体制が無駄がなく効率的である。だから、個別指導に真剣に取り組んでいる塾の多くはこの指導体制を採用している。
これらの数字のマジック以上にえげつないのは、個別指導と大きくうたいながら指導体制を表示しなく、しかも金額だけをおおよそで、つまり○○○円~○○○円といった表示をするのである。こうしたところに限って講師1人に生徒3人、4人といったところが多く魂胆見え見えで特に注意したい。
ここまで授業料の比較の仕方をみてきたが、塾にはそれ以外にかかるものとして、教材費、入会金がある。この二つまでは、ほとんどの塾に共通するが、それ以外に毎年、年会費という名称で何万円か徴収したり、設備費、暖房費等を取るところがある。本来はこれらも月額に直して、授業料に加算して表示するのが良心的であるが、授業料を安くみせるためにこうした手を使う。
もっと酷いものになれば、チラシには表示せず入塾のときに知らされるケース、或いは年度の途中で請求を受けてはじめて知るケースもある。
さらに驚かされることは、消費税を除いた金額を大きく表示して、消費税を含んだ金額はその下に虫眼鏡がなくては読みづらいよな小文字で記載し安そうに見せかける塾だ。消費税を払わなくてもいいのであればいいが、そうではあるまい。生活者を対象に商品等を提供するときは、内税表示(消費税を含んだ料金表示)が原則である。保護者は消費税を含んだ金額を支払う必要があることから当然のことである(消費税が8%に上がった際、特例的に外税記載も可となったが)。こうした不明瞭な料金記載をつづける塾は、“子供の教育”とうい崇高な職域でありながら、その不誠実さ、不真面目さ、そして悪徳さをも感じさせられる。 〈賢い塾選び〉完